追悼 川田順造
川田順造さんが亡くなられました。享年90、長生きされたと思います。
私は川田順造とは面識がなく、ただ『悲しき熱帯I』、『悲しき熱帯II』の翻訳者等として存じ上げていただけです。『人類学的認識論のために』や『口頭伝承論』に至っては気にはなっていますが未読です。
氏は構造主義を提唱したことで知られるフランスの文化人類学者、クロード レヴィ=ストロースの弟子としても知られており、レヴィ=ストロースを日本に呼んだとき、彼が日本をどのように見たのかを描いた『月の裏側 (日本文化への視角) 』は交流の一端をうかがう書物になっています。また、レヴィ=ストロースの最期の様子は『レヴィ=ストロース論集成』の中で描かれているようです。
21世紀の人類学はティム・インゴルドなどのニュートン、アインシュタイン的存在が牽引していますが、それもレヴィ=ストロースの構造主義への批判という観点があります。無視して通れない構造主義者であるレヴィ=ストロースの重要な紹介者である氏が亡くなったのは残念ですが、レヴィ=ストロースに関する多くのことを書き残してくれたのはありがたいです。
同じくレヴィ=ストロースの紹介者であり、日本の文化人類学の理論的側面を牽引していた渡辺公三先生がお若くして亡くなられたのとは対照的に長生きされました。ご冥福をお祈りいたします。